まだ途中(14
カールスルーエでのホテル暮らしは、しばらく格闘の日々でした。
部屋は清潔なのですが、お湯が出ません。
あるのは電熱式の給湯器だけ。
これに見事にやられました。
適温のお湯になるまで、ほぼ1日かかることを知らなかったのです。
私は翌朝シャワーを浴びるつもりで、
「寝る前にスイッチを入れておけば大丈夫だろう」
と考えました。
旅の疲れもあり、その日は早めに就寝。
準備万端のつもりでした。
ところが翌朝。
待っていたのは冷水シャワーでした。
思わず飛び上がりましたが、
おかげで眠気は一気に吹き飛びました。
こうしてドイツでの本格的な一日が始まったのです。
大学へ向かう前、同行の教授も同じ洗礼を受けたと聞き、
二人で思わず笑ってしまいました。
カールスルーエ大学は歴史ある国立大学です。
建物からも長い歴史を感じました。
キャンパスも広く、落ち着いた雰囲気が印象的でした。
案内してくれた職員の方は、とても熱心でした。
研究設備を紹介しながら、
「我が大学には最新のハイテク機器があります」
と胸を張ります。
何だろう?
スーパーコンピュータだろうか。
最新の研究設備だろうか。
そう思っていると、
案内された先にあったのは――
コピー機。
私は思わず同行の教授と目を合わせました。
お互い何も言いません。
でも、
「どう反応したらいいんだろう?」
という気持ちは同じだったと思います。
正直なところ、
私は少し心配になりました。
教授の専門はレーザー研究。
世界的な研究者との面談が目的です。
大丈夫だろうか。
しかし、その心配は余計なものでした。
教授は終始落ち着いておられました。
そして数年後、その研究者は日本の学会から招待を受け、
講演会を開くことになります。
大使館関係者や専門紙にも取り上げられるなど、
大きな成果を残して帰国されました。
私はその時、
自分の知識や経験だけで物事を判断してはいけないのだと感じました。
ドイツという国は、
今でも私には少し不思議な国です。
歴史と伝統があり、
最先端の研究もある。
その一方で、どこか素朴なところもある。
私にとっては、
今でも「つかみどころのない古い大国」です。
次回はカールスルーエを離れ、
イギリスへ向かう途中でいただいた
素敵なプレゼントのお話をしたいと思います。

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