まだ途中(17)
前回までお話ししてきたのは、アメリカやヨーロッパでの出来事でした。
国が変わると、人々の考え方や行動も大きく違います。目の前で起こる出来事に驚くことも多く、その一つ一つが私自身を少しずつ成長させてくれたように思います。
ヨーロッパでは、長い歴史や信仰が人々の暮らしに根付き、自然に周囲を思いやる文化が息づいていることを感じました。
世界一周の旅はまだ途中なのですが、今回は少し気分を変えて、日本に近いアジアでの出来事をお話ししたいと思います。
同じ海外でも、アジアでは驚くことの種類が少し違いました。
私たち営業担当は、製品を紹介するためのサンプルを持って入国することが多く、空港の税関で思わぬ苦労をすることがよくありました。
私が韓国へ通い始めた頃は、日本製品の持ち込みに厳しい規制がありました。
特にカメラやビデオカメラは人気商品だったため、税関で預けさせられたり、パスポートに持ち込み品を記録されたりすることも珍しくありませんでした。転売防止のためだったのでしょうが、今では少し信じられない時代でした。
これからお話しするのは、実際にあった話です。
海外出張が初めてだった若い社員が、デモ機の持ち込みを税関で止められてしまいました。
彼は仕事で必要な機材だと一生懸命説明しましたが、相手もなかなか首を縦に振りません。
やがて別室へ案内され、税関職員と二人きりになりました。
そこで職員は、100ドルを示したそうです。
彼は「保証金のようなものだろう」と思い、素直に支払いました。
ところが職員は、お金を受け取ると、そのまま部屋を出ようとします。
彼は慌てて、
「領収書をください。」
と言いました。
その瞬間、職員は固まったそうです。
100ドルは保証金ではなく、賄賂を要求していたのです。
当時は、国や地域によって、今では考えられないような慣習に出会うこともありました。
日本との違いに戸惑う場面も少なくありませんでしたが、海外で仕事をするということは、文化や価値観の違いも含めて学ぶことだったように思います。
それにしても、悪気なく「領収書をください」と言った彼は、本当に日本人らしいなあと、今でも思い出すたびに笑ってしまいます。
次回は、商談が終わり、製品を引き渡すときに起こった珍事件をお話ししたいと思います。

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