まだ途中(13)
快適な機内、おいしい食事。
フランクフルトまでの長旅も、話し相手がいたおかげで思ったほど長く感じませんでした。
機内では、当時まだあったドイツ入国カードが配られました。
そこで、少し驚くことがありました。
記入欄に、
「religion(宗教)」
の項目があったのです。
今まで海外で見たことがなかったので、
「これは何て書けばいいんだろう?」
と思い、教授に聞いてみました。
すると、
「non(なし)って書くと、変な人だと思われるかもよ」
と笑いながら言われました。
「えっ、信仰がないと変な人なの?」
当時の私は、また一つ勉強になりました。
ヨーロッパでは宗教が生活に深く根付いている。
そんな文化の違いを、最初に感じた瞬間でした。
空港はとても広く、きれいでしたが、不思議と迷うことなく出口へ。
そこからタクシーで駅に向かいます。
荷物をトランクに積み込み、ドアの前で待つ私たち。
……しかし、ドアが開かない。
しばらくして気づきました。
そうか、海外のタクシーは自分でドアを開けるんだ。
日本の感覚のまま、二人で立ち尽くしていました。
今思えば、ちょっと笑える話です。
そして乗り込んだタクシーを見て、また驚きました。
ベンツです。
人生初のベンツ体験。
「これがドイツか!」
と、少し感動したことを覚えています。
アウトバーンを走り、1時間ほどでフランクフルト駅へ。
列車まで少し時間があったので、駅構内を見て回りました。
そして、ここでも衝撃。
トイレです。
皆、壁に向かって用を足している。
いや、正確には「壁」に見えたのです。
近づいて見ると、仕切りも段差もほとんどない、共同型の設備。
「これでいいの?」
と、日本人の私は少し戸惑いました。
列車で約1時間。
ようやくカールスルーエ駅に到着。
そこから再びタクシーでホテルへ。
(今度はちゃんと自分でドアを開けましたよ)
大学側が手配してくれたホテルは、想像とはかなり違いました。
今でいうビジネスホテル以下。
どちらかと言えば、民宿のような雰囲気です。
フロントは英語が通じない。
ドイツ語だけ。
部屋は清潔でしたが、
石鹸も歯ブラシもない。
もちろんシャンプーもない。
バスタブもなく、簡易シャワールームのような設備だけ。
「3泊、大丈夫かな……」
正直、少し心配になりました。
石鹸を買いたいと言っても通じない。
結局、教授が気を使ってくださり、シャワーの使い方まで教えてもらうことになりました。
ドイツに着いたばかりなのに、
「これがドイツ?」
の連続。
そんなスタートでした。
次回は、カールスルーエ大学や街の様子。
当時の私が感じた「ドイツらしさ」のお話をしたいと思います。

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