まだ途中(20)
今の仕事も14年になります。
振り返ってみると、同じ組織でこれほど長く働いたのは初めてです。
私の仕事は長い間、海外との取引が中心でした。
同じような経験を持つ人はたくさんいますが、その中でも
旅券の手配、宿泊先の予約、ビザの取得、取引先とのアポイントまで、
すべて自分で切り開いて海外を飛び回る人たちがいます。
私は、そんな人たちを心の中で「戦士」と呼んでいます。
今日は、その戦士の一人から聞いた話です。
彼は名古屋に本社を置く機械メーカーの海外担当課長でした。
展示会への出展や海外工場への訪問など、一人で何でもこなす
オールラウンドプレーヤーです。
そんな彼が、バンコクで開かれる展示会に新人の女子社員を
連れて出張したときのことでした。
新人は語学も堪能で、初日の仕事も順調に終わりました。
夕食を済ませ、市内のホテルでくつろいでいると、突然ドアがノックされました。
開けてみると、新人が青ざめた顔で立っています。
「今夜、この部屋で寝かせてもらえませんか……」
事情を聞くと、部屋に何度もボーイがドアをノックしに来るというのです。
海外では珍しくないことでも、日本でしか生活したことのない新人にとっては
恐怖そのものだったのでしょう。
彼は事情を説明し、「必要がなければ断れば大丈夫だから」と安心させました。
それでも新人の不安は消えず、結局その夜は彼自身もほとんど眠れなかったそうです。
翌日からはホテルを変更することになりました。
海外経験豊富な彼でも、新人を連れて行くとなると話は別です。
仕事だけでなく、不安や文化の違いまで支えなければならない。
「海外の新人教育は、本当に難しい。」
そう笑って話していましたが、その言葉には長年海外を
歩いてきた人だからこその重みがありました。
私もこの話を聞いて、海外では仕事の準備だけでは足り
ないのだと改めて感じました。
相手の文化を知ることはもちろん、一緒に行く人の経験や
不安まで考えて計画を立てること。
それも海外で働く者の大切な仕事なのだと思います。
次回も、この「戦士」が体験した、
もう一つの予想外の出来事をお話ししたいと思います。

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