まだ途中(21)
前回の話で、私は今の職場が一番長い職場だとお話ししました。
しかし、働いた場所ということで言えば、中国が一番長く、15年ほど関わってきました。
それまで中国には行ったことがなく、現地のこともよく知りませんでした。
それまで経験してきた、いわゆる西洋式の仕事や習慣とは違う世界。
私にとっては、新しい海外の仕事の始まりでした。
駐在員のころは、同じ駐在員同士でよく苦労話をしたものです。
その中でも、中国駐在の経験者からは、仕事だけでなく生活面まで、いろいろな話を聞きました。
よくこんなことを言っていました。
「中国の駐在に比べたら、アメリカは理屈も通るし、安心して仕事ができる!」
ところが、そのアメリカでさえ、信じられないような体験をした人がいました。
今日は、その話です。
事件と言ったほうがいいかもしれません。
舞台は、西海岸の「ホリデー・イン」です。
友人の彼は、そのホテルをよく利用していました。
その日も仕事を終えてホテルに戻り、部屋のバスタブにお湯を張っていました。
ところが、うっかりそのことを忘れてしまった。
気がついた時には、浴室が水浸しになっていました。
普通なら、この程度のトラブルで大きな問題にはならないでしょう。
ところが、運悪く、あふれた水が下の部屋まで流れてしまったのです。
フロントから連絡が入り、彼はすぐに対応しました。
しばらくすると、ハウスキーパーが二人、部屋にやって来ました。
水回りを調べた結果、
「栓が壊れていた」
とのこと。
彼も、これで一件落着と思ったそうです。
そして翌朝。
チェックアウトのために荷物を整理していると……
財布の中身が、空っぽになっていました。
私はこの話を聞いて、しばらく考えてしまいました。
ベテランの駐在員です。
しかも、何度も利用している、よく知ったホテルです。
それでも、こんなことが起こる。
海外では、予想外のことが本当に起こります。
彼にとっては、高くついた勉強代だったと思います。
そして、海外で働く者にとっての教訓にもなりました。
トラブルが起きた時、
「相手が悪い」
と考える前に、
「自分に何かできることはなかったか」
と振り返る。
海外で長く仕事をしてきた先輩たちから、私はそんなことも教えられました。
海外での仕事は、相手との交渉だけではありません。
予想外の出来事にどう対応するか。
それもまた、海外で働くということなのだと思います。
次回は、またアジアに戻って、少し肩の力を抜いて「グルメ?」のお話をしたいと思います。

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