まだ途中(19)
私は海外で35年ほど仕事をしてきましたが、
その多くはアジア諸国とのお付き合いでした。
アメリカやヨーロッパにも魅力はありましたが、距離や時間、
費用を考えると、アジアは仕事がしやすい地域でもありました。
そんなアジアで、今でも忘れられない言葉があります。
ある世界的な企業で製品説明を行った時のことです。
相手は技術者ばかり。私は慣れない英語で説明を続け、
最初のうちは何とか質疑応答もできていました。
ところが、話が専門的になるにつれて、お互いに英語だけでは
細かなニュアンスが伝わらなくなってきました。
その様子を見ていた担当者は、すぐに社内の通訳を呼んでくれました。
おかげで講習会は無事に終わり、その後、お茶を飲みながら
雑談をしていた時のことです。
担当者が、こんなことを話してくれました。
「わが社では、売り込み先の言葉が話せる者が商談を担当します。」
私は思わず、「その通りだ」と納得しました。
それ以来、私はできるだけ相手の国の言葉で
話しかけるようになりました。
上手ではありません。
時には現地の方言を教えてもらい、
それを使って笑われることもありました。
それでも、自分の国の言葉で話しかけられると、
相手との距離は確かに近くなるのです。
相手の何気ない一言が、後になって
人生を変える教えになることがあります。
あの日聞いた言葉は、まさに私にとって
「天からの声」でした。
次回は、海外で働く友人から聞いた忘れられない話をお届けしたいと思います。

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